生活・家電
「未来を変革する素材」の普及に貢献して、カーボンニュートラル社会を実現
2022.06.27
地球規模で課題となっている気候変動問題について、政府は「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」ことを宣言しました。「実質ゼロ」とは、二酸化炭素など、温室効果ガスの排出量を削減するだけでなく、その吸収量と除去量を増やすことで、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させるということ。こういった「カーボンニュートラル」の取り組みが、いま世界中で進められています。
カーボンニュートラル社会の実現には、さまざまなアプローチ方法があります。例えば自動車ひとつとっても、「ガソリン車をEV(電気自動車)に移行する」「車体を軽量化してエネルギー消費量を減らす」「プラスチックの原料を、化石燃料由来のものからバイオマス由来のものに変える」といった手段が考えられます。
カーボンニュートラルな社会の実現に必要不可欠なのが、様々な特性を持つ素材と、それを活用した製品の力です。EVに搭載するリチウムイオン電池や、バイオマスプラスチックなど、既存素材が持つ課題を解決する「未来を変革する素材」が注目を浴びるようになっています。
ただ、どんな素晴らしい素材でも効率良く大量に生産できなければ、世の中に普及させることはできません。
私たちJSWグループは、さまざまな素材の製造装置、および加工装置を提供しています。まだ世の中に十分に普及しておらず、製造・取り扱いが確立していない素材であっても、新たに製造、成形加工技術を開発・提供し、その普及を助けるのが私たちの役割です。
「未来を変革する素材」の製造とその成形加工を助け、普及に取り組むことで、JSWグループはカーボンニュートラル社会の実現に貢献しています。
リチウムイオン電池は、今や私たちの生活に欠かせない存在となりました。スマートフォンやパソコンのバッテリーをはじめ、EVやHEV(電気式ハイブリッド車)の動力として、近年その需要は急激に高まっています。
リチウムイオン電池は、大きく分けて「正極」「負極」「電解液」「セパレータ」の4つのパーツで構成されています。このうち「セパレータ」は樹脂製のフィルムであり、正極と負極の接触を防ぎつつ、電解液の中のリチウムイオンを通過させる、重要な役割を果たしています。
JSWグループは、このセパレータフィルムの製造装置を手掛けており、国内外で高いシェアを誇ります。国内および世界へリチウムイオン電池を安定して供給する、その一端を担っています。
マグネシウム合金は、実用金属の中で最も軽く、剛性や比強度(密度あたりの引っ張りに対する強度)に優れている金属です。その「軽くて強い」という性質から、スマートフォンや家電製品、医療機器など、主に小型パーツを中心に軽量化を目的として幅広い場面で用いられてきました。
これまでマグネシウム合金部品はダイカスト法を用いて製造するのが一般的でしたが、私たちはチクソトロピー(半溶融)状態を用いた射出成形法により精密で、低エネルギーかつ低環境負荷な条件で成形できる「マグネシウム射出成形機」を開発し、市場に提供してまいりました。
そして、製造現場から長らく望まれていたのが、マグネシウム合金を使用して、より大型なパーツの成形加工が可能な「大型のマグネシウム射出成形機」でした。
この要望をうけ、JSWグループでは、従来よりも大型な部品を成形加工できる「マグネシウム射出成形機」の開発に成功しました。これにより、自動車の大型部品への適用など、マグネシウム合金のさらなる活用が期待でき、車体の軽量化に貢献いたします。今まで培ってきた鋼と樹脂の加工ノウハウを組み合わせた、JSWグループならではの技術です。
一般的な化石燃料由来のプラスチックは自然環境で分解されないため、自然環境中に廃棄されると、海洋汚染や土壌汚染などの原因となってしまいます。世界的に「脱プラスチック」の動きが高まるなか、注目されているのが、「バイオマスプラスチック」および「生分解性プラスチック」です。
バイオマスプラスチックは、空気中の二酸化炭素が植物などに取り込まれたものをカーボン原料としているため、燃やして二酸化炭素になっても元に戻っただけであり、二酸化炭素は増えていないと見なせるカーボンニュートラルな素材です。生分解性プラスチックは、従来のプラスチックと同様の機能を持ちながら、環境中で微生物などの働きにより、最終的に水と二酸化炭素に分解される素材です。そのため、環境中に廃棄された場合でも自然界に悪影響を与えない素材です。また、生分解性プラスチックの多くは、バイオマス由来となっています。
こういったプラスチック製品の成形には、一般的に「ペレット」と呼ばれる粒状の樹脂原料への加工が必要です。JSWグループでは、ペレット製造装置のほか、生分解性プラスチックおよびバイオマスプラスチックを成形加工する装置も手掛けています。どちらも従来のプラスチックとは製法や成形加工条件が異なるため、素材に対応した製造加工技術を必要とします。
独自の技術により、生分解性プラスチック、およびバイオマスプラスチックの普及に貢献しています。
自動車や航空機などのモビリティは、その重さが燃費に直結します。温室効果ガス排出を抑え、エネルギー利用を効率化するためにも、車体や機体の「軽量化」は大きな課題です。軽量化を実現する素材として、近年注目を浴びているのが、炭素繊維(CF)やカーボンナノチューブ(CNT)といったカーボン由来の新素材です。
これらは炭素を原料とする軽量・高剛性な素材ですが、それら単体では成形品形状を維持できません。そのため、主にプラスチックなどの母材と一体化させて複合材(繊維強化プラスチックなど)化することで、軽量・高剛性な材料として使用が可能になります。こういった素材の成形・加工にも、特殊な技術が必要になります。
JSWグループでは、ニーズが高まっているCFやCNT等の素材をさらに世に普及させるため、それらの製造装置と、素材をプラスチックと一体化させて繊維強化プラスチック成形品とする成形加工装置を供給。製造現場のサポートを通して、新素材の普及に取り組んでいます。
EVや産業機器、5G基地局など、幅広い分野の電力制御に用いられているのが、高電圧や大電流を扱う「パワー半導体」です。産業界で省エネルギー化が進むなか、パワー半導体も消費電力の削減が求められています。
そこで、新たな半導体材料として注目されているのが、窒化ガリウム(GaN)です。従来の半導体材料であるシリコン(Si)に比べ、電力消費の低減や、小型化、高効率化を図れると期待されています。
JSWグループでは、高温高圧下で人工水晶を製造する技術を応用し、高品質の窒化ガリウムの製造技術を開発しています。高品質な結晶を製造するにはまだコストが高く、今後の発展が見込まれる分野です。
今後の活用が期待される素材および製品が、より効率良く、より高い品質で製造・加工できるよう取り組むことで、JSWグループはカーボンニュートラル社会の推進に取り組んでいます。
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