窒化ガリウム

 窒化ガリウム(以下GaN)は、化合物半導体の一種であり、高効率・高耐久性で超高効率な「パワー半導体」を実現する素材です。従来のシリコン製の半導体から、GaNを使用したデバイスやシステムが普及することにより消費電力が削減出来ることから、環境負荷の低減が期待されています。青色LEDのみならず、以下のような用途での応用が期待されています。

  1. 省エネを実現する高輝度・高出力レーザ、高効率照明、新世代ディスプレイ
  2. 大容量データを瞬時に送受信できる高周波・光通信デバイス等、次世代高速通信(5G)やポスト5G通信
  3. 機器や装置を小型化でき、現在のSi系基盤よりも大電流動作が可能な高耐圧パワー半導体

 

 日本製鋼所はこのたび三菱ケミカル株式会社と共同でGaN単結晶基板の量産に向けた実証設備を日本製鋼所M&E株式会社室蘭製作所(以下「室蘭製作所」)構内に竣工しました。2021年度にかけて4インチのGaN単結晶基板の量産に向けた実証実験を行い、2022年度初頭からの市場供給開始を目指しています。

これまでの技術開発の取り組みと今後に向けて

 日本製鋼所は、関連会社ファインクリスタルで人工水晶製造用のオートクレーブ(圧力容器)を製造しており、日本国内のシェアは100%で累計415基、海外も24基の実績があります。またグループ会社で30年間にわたり人工水晶を製造し、主に国内のカメラメーカに多くの光学部品を納入しております。

 三菱ケミカル(株)は、気相成長法(HVPE)と化合物半導体の加工技術を用いた高品質のGaN基板の製造技術を有しており、より高い生産性を目指し独自の液相成長法(Super Critical Acidic Ammonia Technology、以下「SCAAT™」)によるGaN基板の開発を進めております。

 日本製鋼所は三菱ケミカル株式会社および国立大学法人東北大学多元物質科学研究所と2008年からGaN結晶成長の共同研究を開始しました。2013年から東北大学多元物質科学研究所秩父研究室において、大口径・高品質・低コストGaN基板の製造技術の開発を進め、低圧酸性アモノサーマル法(LPAAT法)*¹と称する将来の量産に向けての基本技術を確立しました。新たに開発した製造プロセスは「SCAAT™ -LP」として商標化しました。2017年に室蘭製作所内に建設したパイロット設備において、透明で結晶欠陥が極めて少ないGaN基板の低コスト製造技術の開発に成功し、4インチサイズの均一な結晶成長を確認しました。

 さらに国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学・天野研究室とも結晶成長や特性評価等の共同研究体制を構築しています。

 この度、導入した大型設備では、「SCAAT™ -LP」を用いて4インチのGaN基板の量産に向けた実証実験を行います。この実証実験を踏まえ、GaN基板の安定供給体制を構築するとともに、近年需要が増加するパワーデバイス用途に適用可能な6インチ基板の開発にも取り組んでいきます。

 

 なお、本成果の一部は、文部科学省官民イノベーションプログラムによる東北大学ビジネスインキュベーションプログラム(BIP)*²および国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業*³の結果得られたものです。

<実証設備の概要>

  • 所在地:日本製鋼所M&E株式会社室蘭製作所(北海道室蘭市茶津町4番地)内
  • 総面積:266m²
  • 主要設備:大型オートクレーブ装置、加熱ヒータおよび制御装置、アンモニア供給・吸収設備、高純度ガス精製装置等

*1 低圧酸性アモノサーマル技術

  •  通常の温度・圧力では溶解しない溶質を、高温・高圧の超臨界流体中に溶解させ、炉内の温度勾配に応じた溶解度差を利用して種結晶上に溶質を再結晶させるソルボサーマル法の一種です。超臨界アンモニア中へのGaNの溶解を促進させる鉱化剤として、ハロゲン化アンモニウム(NH₄X, X=Cl, Br, I)等の酸性鉱化剤を用いています。大口径GaN基板の量産に適した大型製造設備の実現を可能とする、比較的低い圧力条件(従来技術の約半分の100MPa程度)で結晶成長を行う技術です。

*2 東北大学BIP

  • 2015~2017年度:「高効率レーザーダイオード・高エネルギー変換効率パワースイッチング素子用 GaN基板の酸性アモノサーマル法による実証」

*3 NEDOの助成事業

  • 2017~2019年度:「低炭素社会を実現する次世代パワーエレクトロニクスプロジェクト」
  • 2020~2021年度:「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」
GaN01
GaN02

パイロット設備で育成した各種GaN結晶

パイロット設備のオートクレーブと量産時の大型化(イメージ)

パイロット設備のオートクレーブと量産時の大型化(イメージ)

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